And But Cause I love you


夜半の片隅

今はまだ



***



「星キレーだなー」
「そうかもな」
「かもってなんだよかもって。キレーじゃねぇか」
「綺麗な筈の星を何故素直に綺麗だと思えないのだろうな」
「ぐ」
「何故この夜空をお前と眺める羽目になっているのだろうな」
「ハイハイハイすいませんでした俺が悪かったです」
「誠意が足りない」
「誠に申し訳ありませんでした」

俺の全く心の籠っていない誠意ある謝罪が胸に響いたのかどうかは知らないが、馬鹿にしたような、ハッ、という溜息をついてセフィロスは黙った。
全く。過ぎたことをネチネチと。とはいえどこれは完全に自分に非があるので文句も言えない。いやあ、まさかうっかり荷物を全部燃やしちまうとは。相当俺もお茶目だ。
勿論悪かったとは思っている。野営用の道具は全て灰になったし、食料も言わずもがな。地図とコンパスまで駄目にしてしまったんだからこれはもうなんていうか、全てゴメンナサイという感じだった。
ピッチは圏外。まあ、此処から出る手段が無いわけではないのだけれど、いかんせん夜も更けた。動くのにはあまり向いていない。
なんといったって森の中だ。鬱蒼とした、というよりはさらさらと乾いた、静かで大人しい森だと思う。とは言っても広大なので、今日中に出れるとは思わない。
トラクターも入れないし、仕方が無く道具を詰めて出発すればこれだ。モンスターがいることは勿論把握していたが、まさか反乱分子に待ち伏せされているとは思わなかった。
いきなり奇襲されて、おかげさまで荷物が御陀仏だ。言わせてもらうとすれば、あんなところにトラップのように荷物追いとくなよなあというその一点だけである。
敵に取られないようにという咄嗟の配慮と配置だったらしいが、すわ敵の待ち伏せかと思って咄嗟に燃やしてしまった俺に抒情酌量の余地は、どうだろう。やはり無いだろうか、仕方ない。
それにしたって、夕飯を捕って来るのも調理するのも寝床を探したのも俺がやったのだからそろそろ許してくれてもいいような気がするけども。

「そんなに野宿嫌かよ?」
「野宿と言うよりは、こんな間抜けな目に遭っていることが、だ」
「それ逆に性格悪りぃぞ」

俺の素直な忠告は鼻で笑われただけだった。もう今の俺が何を言っても説得力もへったくれもあったもんじゃない。
一度の落ち度が全ての信頼につながるとは。やれやれ。大人の世界ってのはシビアだねぇ。
不幸中の幸いだったのは、ただひたすら、季節が秋だということだけだった。寒くも無い。暑くも無い。実に過ごしやすい夜だ。
これが真冬だったら野垂れ死んでいた可能性も否定できないので、セフィロスの怒りはまあ、もっともなわけだが。
虫の音が空気を静かに震わせている。この音は故郷でよく聞いた。ただ、虫の名前は判らずじまいだ。というか、村に正式名称を知っている奴がいなかった。
笹目虫と呼んでいたけれど、はて、こちらではなんと呼ぶのだろう。きっと味気ない名前がついているんだろうなぁと思って溜息をついた。
俺とセフィロスが座り込んでいるのは木の下。森の中でも少し開けた空き地。下は芝生なので寝転んでもあまり痛くない。本当に大人しい森だ。そう思う。
朽ちた大木が横倒しになって苔むしていた。若い苗木がそこから生えている。きっとそのうちこの空地も森の中に飲み込まれるんだろう。
今はただ、夜空が広い。我ながら野営しやすい場所を探しだしたものだ。泊まる道具は、まぁ、無いけれど。
隣でセフィロスがもう一度溜息をついた。

「お前はいつまでひきずるつもりだよ」
「そろそろやめようか」
「そうしてくれ」

わざとほとほと困り果てたように言えば、自分で思っていたよりも情けない声が出たので面白くなって笑ってしまった。説得力が無いぞと呆れられる。
説得力なんて最初から一つでもあったか?そう聞けばあっさり無いなと返された。その通りだけれども。
お前、自分の落ち度は認めていても謝る気は無いだろう。そう笑われて俺は顔を逸らした。その通りだけれども。その通りだけれども!
他の奴に言われると気まずいというか、随分と自分勝手な意見だった。我ながら。
いやいやいや。別に謝るつもりはあったし実際謝ったし申し訳ないと思ったぜ?ただ、何回も謝罪するのは面倒くさかっただけで。
ねちねちずるずる文句を言ってきたセフィロスにも非がある。無いか。無いな。やっぱ悪いのは俺か。はぁ。
こんなことを考えているのも面倒になった。寝転びながら目を閉じた。そうしてすぐに開けた。視界に広がる夜空。星。星星星星。

「でも本当に綺麗じゃあねぇか」
「認めよう」

もう文句を言うのはやめると言ったその言葉を守るように、今度は素直な答えを返してきた。最初から素直になりゃいいと思うんだけどな。まあ、そこは言っても仕方ないだろう。
俺は星座なんて全然知らないので、何かの形を見つけて感動する事は無いんだけども。セフィロスは知ってそうだなぁとぼんやり思った。
説明を受けても忘れてしまいそうなので尋ねるつもりにはなれない。忘れた時に同じことを聞いて呆れられそうだ。
それに、こんなものは自分の中で形を作ればいいだけなのだ。なんでわざわざ昔の人の言うことを聞く必要があるんだか。
ていうか、正直わかりにくくね?俺が考えた星座の方が絶対に判りやすい。ほら、あそことあそことあそこを結んでギョーザ。
なんて、あまりにもお寒い思考に我ながら嫌気がさした。なんだよギョーザって。ギョーザって。おかしいだろ。疲れてんのかな。
星。星星星星星星星。あんまりにも多いもので、俺はその時ようやく右手に浮かぶ月に気がついた。月に気がつかないなんてことがあるもんだ。普通はそっちが目立つ筈なんだけどなぁ。
月。月は一つしかないので連呼する必要は無いんだが、月かぁ。月なぁ。

「そういやさ、俺、前にすげぇこと気づいたんだよ」
「期待しないで聞こう」
「ああ。俺達ってさ、月の上を歩いてるんだぜ?」
「全く意味が判らない」

話し運びが悪かったらしい。一刀両断で切り捨てられた。あちゃあ。
寝転ぶ俺の横で、セフィロスは正宗を抱えて座っている。寝ればいいと思うのだが、どうもそういう気分では無いらしい。
もしもこれが、芝生に寝転がりたくないなんていうセレブな理由だったら絶対にぶっとばしてやろうと心に誓った。絶対だ。
風が流れる。目に見えない風が流れる。本気を出せば風が舞い上げる埃くらいは見えるので、形を掴もうと思えば掴める訳だが。んなことは面倒なのでやりたくない。
風は木の葉をまんべんなく揺らして、俺の前髪を少し揺らして、セフィロスの髪を撫でて通り過ぎる。ああ、やっぱいい季節だ。
さて、どう説明すればよいのだろう。お世辞にも俺は論理的な論理を語るのには向いて無い。感覚的な話し方しかできねぇし。
それが伝わる奴なら良いんだが、セフィロスはセフィロスで感覚なんてもんがさっぱり判らない鈍感野郎だった。あー、意思疎通の難しさよ。
でもまぁ、あっちからすれば論理的な話が通じない馬鹿野郎なんだろう。俺は。そう思えばどっちもどっちで仕方なかった。諦めるっきゃない。
さて、どう説明すればよいのだろう。どう説明すればよいのだろう。
考えても上手い言葉なんかは見つからなかったので、もういきあたりばったりで話すことにした。つまり、いつも通りだ。

「つまりだな、なんて言やいいんだ?」
「そんなものオレが知るか」
「えーっとだな、ほら、月って、丸くなったり細くなったりするだろ?」
「恐ろしく馬鹿みたいな言い方だな…」
「つっかかんなって。満ち欠け?って言えばいいのか?」
「ああ。それで?」

一応話を聞いてくれるつもりはあるらしい。とりあえずそのことに安堵する。これで気の無い相槌なんてされた日にゃ、ただでさえ苦手な説明がもっと苦手になりそうだった。
聞いてくれるのなら俺にはしっかり話す義務がある。必死に考える。
とは言っても無い物はでない。そのことをまざまざと思い知らされる羽目になった。勉強しとけばよかったと思うのはこういう時だ。
せっかく伝えたいことがあっても、共有したいことがあっても、それを伝える手段が無かったら何の意味も無いだろう。
それを思えば言葉を生みだした人類は偉大だ。ただ、言葉はまだまだ足りていない。俺の伝えたいことを伝える言葉が無い。
いや、それもやっぱり俺が知らないだけで、本当は世の中にあるのだろうか。だとしたら俺は今度こそ本気でセフィロスに謝らなくちゃいけないわけだが。
拙くても努力を諦めてはいけない。そういうことらしかった。ああああ負けるな俺!頑張れ俺!まだ話始めだぞ!全然本題まで辿りつけて無いぞ!

「でさ、あれって月自体が太ったりしてるわけじゃねぇじゃん。そう見えるけど」
「その通りだな」
「あれってさ、この星の影なんだろ?」
「その通りだ。で、どうしてそんな子供の学習を今復習しているんだ?」
「まあ聞けって。でさ、俺たちはこの星の上にいるわけじゃん」

セフィロスの顔は完全に呆れているものだった。そうだな。呆れるだろうよ博識なお前からしたら。
こりゃ、実は月自体が膨らんだりしてるわけじゃないって知ったのは結構大きくなってからだってことは控えた方がよさそうだった。
なんというか、初めて知った時はロマンが無いもんだと思った。月が、あの星が形を変えて世界を照らしているのだとしたらどんなにか愉快だろうと。
いや、月が発光しているわけでも無いんだったか。それもそれでなぁ。なんでわざわざそんなこと発見しちまったんだろう。馬鹿なんだろうか。
そんなこと知らなけりゃ、俺たちは月の輝きを月の輝きのまま受け止めることが出来ただろうに。
元が太陽の光だからってそれがどうした。夜を照らしてくれているのは月じゃあないか。それになんの違いがある。
それを知った時に、月を卑怯者だと呼ぶ奴は確かにいた。太陽の力で照らしているのに、自分が照らしているようなデカイ顔をしやがって、とか、そんな。
俺はやっぱり何かおかしいと思ったけれど、そいつの気持ちが判らない訳でも無かったので、結局なにも言わずに考え込むことしかできなかった。
知らない方が良いことっていうのは絶対に確実に確かに存在するよなあ。それは、本当に、つくづくそう思う。
なんて、思考が逸れていることに気がついた、違う違う。そうじゃない。今はそういうことじゃあない。
そうじゃあなくて、だ。知ったその時は、なんでこんなこと知っちまったんだろうと思ったもんだが、ここにきて俺はその知識に感謝している。
そうだ、俺は気づいたんだ。この前。一人で夜空を見上げた時に。十六夜の月が俺の真上で光っていた時に。太陽の光とは違う穏やかな粒子を降らしている時に。
唐突に判ったのだ。この月の見えない部分にある月の姿が。影になって隠れている月の大地のことを俺ははっきりと理解したんだ。そこに存在しているということ。

「ってことは、さ、あの影には俺たちがいるわけだ」
「待て。その発想は飛躍しすぎだ」
「そうでもねぇよ」
「全く判らん」
「太陽の光を遮るから影が出来るんだろ?んで、あれは星の影なんだろ?」
「だから、月の影にはオレたちもいると?」
「そういうこと」

一つも納得できないんだが。真面目に言われて俺は顔を覆う。だよなあ。だと思ったよ。正直こんな説明でお前に理解してもらえるとは思わなかったけどさあ。
ただ、これ以上に理論的な言葉を俺は持たない。世界のどこかにはあるのかもしれないが、俺の手持ちじゃあないんだ。持っていない物は出せません。
あの時の俺の感動をなんと伝えよう。一人、そのことに気がついて立ちすくんだあの時の俺の感情。
月に影が落ちているということを、俺は知識として勿論知っていたけれど、そのことを一つも実感していなかったのだ。あの時まで。
ただ、本当に突然気がついたのだ。見えない部分に落ちる影の存在と、影が落ちた大地の存在と、その影を作りだしている自分の存在に。
何億光年という距離を超えて、この星の影が月にかかっている。そして星の上に俺がいる。
影っていうのは、俺の分身みたいなものだろう?俺と繋がっているものだろう?そりゃ、宙に浮いている時は繋がっちゃいないかもしれないけれど。
それでも、俺が動けば影も動く。だからきっとあの月の上では、俺の影がとび跳ねているんだ。遠い遠い遠い遠い全てを越えて。
今は俺が横になっているから、影だって横になっているんだろう。他の影に隠れて、そんなしっかりとした俺の輪郭が浮かび上がる訳でも無いんだろうけど。
それでも、他の影の中に俺の影もある。それに気がついたんだ俺は。

「細かい理論とかはどうでもいいんだって。たださ、大事なのは実感だと思う訳よ」
「実感?」
「考えてみろよ。俺たちが地球で飛んだり跳ねたりしてる時にさ、月の上でも俺たちの影が飛んだり跳ねたりしてるんだぜ?」
「それを実感しろと?」
「そうそう。面白くないか?」
「面白い、か?」
「応。それに感動した。滅茶苦茶感動した」

感動のあまり、しばらくアクロバットしてしまったほどだ。俺の影は、一つも重力に縛られることなく自由に舞ったことだろう。羨ましい限り。
月に向かって手を振れば、月の上で俺が手を振り返している。それを俺は実感した訳だ。別に、実際はそんなこと起こり得ないって判ってるぜ?ただ、そんなんは些細な瑣末ってことだ。
そして俺は初めて、月が太ったりしてる訳でもなく、影の形が変わっているんだと教えてもらた事に感謝した。まじだ。
だって、それを知らなきゃ、俺はいつまでたっても月に手が届かなかったんだから。今の俺はもう月を踏んでいる。踏みしめている。
向こうの向こうで、俺とセフィロスの影は俺とセフィロスと同じ形をして存在しているんだろう。俺は寝転んで。セフィロスは座ったまま。
俺の代わりに月の風を感じてくれていることだろう。

「実感というのは判らないな」
「想像じゃなくてさ、実際にそうだなって感じるっつーか。うまくいえねぇ」
「お前がうまく言えた試しなんて無いだろう」
「じゃあそこはセフィが補ってくれ頑張れ」

最後は結局投げやりのようになってしまった。ただこればっかりは仕方無い。感覚は強制できるもんじゃない。
いつかセフィロスが実感してくれる日を祈るばかりだ。その時は乾杯したって構わない。シャンパンで月までコルクを飛ばしてやる。
満足した俺に対して、セフィロスは何か考えているようだった。真剣に。

「お前は、月に行きたかったのか?」
「は?どうしてそういう話になるんだ?」
「そういう話だとしか思えない」

その理論は全く判らないんだが、こいつがそう言うってことはそうなんだろう。はて。俺は月に行きたいのだろうか。
答えは考えるまでも無くイエスだった。空に憧れを持たない奴なんて世の中にいるんだろうか。星を掴みたいと願わない奴がいるんだろうか。

「星は夜空に空いた穴だ」
「へ?何の話だ」
「おとぎ話だな」
「へえ。そんなの読むんだなあんたも」
「読まされた、の方が近いがな。夜空は無限に広がってなんかいないという話だった」
「宇宙に行っちまうってことか?」
「違う。この夜空はドームのようなものなのだと。夜色の絵具で塗られたドームに、針で穴を開けたんだ」

まさかセフィロスの口からそんなメルヘンチックな話が出てくるとは予想外だったが、なかなかに興味深い話だったので黙って聞く。
いや、しかし本当になんでこんな話を知ってるんだ?読まされた?ってことは、ジェネシスあたりだろうか。ありえる。むしろその可能性が一番高い。
だとしたら、それはおとぎ話とは言っても、戯曲に近いような、古典の話なんだろう。そもそも有名な童話なら俺だって知ってる筈だし。
なんとなく納得がいった所で、セフィロスがどうしていきなりこんな話を始めたのかは全く判っていないことに気がついた。
夜はだんだん深くなっている。意外と結構な時間が経ってしまっていたらしい。月の位置もさっきより大分傾いている。
モンスターよりも敵にみつかる方が恐ろしいというので、火は点けないことに決めていた。暗い。ソルジャーの目でも暗い。
その分、星も月もひときわ輝いて見えた。そもそも、なんで星の話なんてしてるんだろう。どうせ俺が原因なんだろうけどな。

「ドームの向こうはひたすら黄金の光に溢れていて、その光がこちらに漏れてきているのが星の明かりだと言う話だった」
「へええ。ドームの向こうの世界か。俺たちみたいな人間がいるのかな」
「いや。ただひたすら光のみの世界だと。黄金の粒子がたゆたうだけの世界だと描いてあったがな」
「それは夢があるんだか無いんだか微妙だな。それで?」
「その話を初めて読んだ時、俺はなんて馬鹿な話だろうと思った」
「マジで一つも夢が無いなそれは」
「ただ、どこかで納得していた。この世界はドームで、その向こうは何も無いただ幸いだけ溢れた光があるんだと」
「あー、成程な」
「そういうことなのだろう。結局。お前の言っている実感というのは」

本当はそれが俺の言っている実感と同じものなのかどうかなんて俺にはさっぱり判らなかったし、違う可能性の方が高かったのだが、俺はああ、と頷いた。
正しいにしろ間違っているにしろ、自分が信じたことを見つけられればそれでいいのだ。
そんな良い説教みたいな話をしていたつもりは無いんだが、なんだかそんな感じにまとまってしまったので別に良いだろう。悪く無い。
満足して目を閉じる。たまには夜空の下で装備丸裸の野宿も悪くないだろ、と言おうと思ったがやめた。やぶへびすぎる。
星が照らす。月が照らす。俺たちのことを。ドームの外から漏れた光と、月自体が放つ光が世界を照らす。俺からしたらこれが現実だ。科学の真理に何の意味があるっていうんだろう。
知らない方が良いこともある。目を閉じた俺の耳に笹目虫の声。世界を震わせるささやかな音。
こいつの正式な名前を俺は知らない。村に知っている奴は誰もいなかった。きっと味気ない名前がついているのだろう。
だけどもしかしたら、月の形のように、俺に新たな世界をもたらすかもしれないわけで、うん、気が向いたら聞いてみようと思った。
知らない方が良いこともあるが、知っておいて損は無いことだってあるだろう。そう、とりあえず今は星座の名前だ。
俺でも覚えられるように教えてくれと頼めば、面倒臭そうな顔をしながら、それでも一つ一つ教えてくれた。エピソード付きで。正直覚えられるかは判らんが判り易くはある。
だから、なんでお前はそう色々なことを知っているんだよと思う。こいつが知らない言葉なんて、世の中に無いんじゃないだろうか。こいつが知らない言葉は世界に存在しない言葉だ。
ふ、と思う。思い出す。セフィロスの言葉。一度気になるともう気になって仕方ないのでそのまま聞くことにした。

「なぁ、セフィロス」
「なんだ」
「お前、ドームの向こう側に行きたかったのか?」
「何故そういう話になる」
「そういう話だとしか思えねえ」

自分で言いながら、あれ、これさっきのセフィロスの反応と一緒だなと気がついた。
何か言おうと思ったが、どうしても言葉が出てこない。やれやれ。また、手持ちに無い言葉らしかった。たいがい馬鹿だな俺も。
セフィロス本人は、本気で俺が何を言っているのか判らないらしい。まあ、いいか。
それでも何か言っておくべきだとは思ったので、もしもドームの外に行くことがあったら俺も連れてってくれよとだけ言った。
お前の影だけ連れいていこうかと言われて思わず笑う。今夜のセフィロスは珍しくノリが良い。

「っていうかセフィロス、寝ねぇの?」
「寝るぞ」
「そうじゃなくて、横になんねぇの?」
「いざという時この体勢の方が圧倒的に対処しやすいだろう」
「全然セレブな理由じゃねえな」
「何の話だ」
「こっちの話だな」

今度こそ、本当に目を閉じて全ての光をシャットダウン。だいたいの話は回収したよな?あと気になる所はねぇよな?よし。だったらきりよく今日はこれで終わりだ。明日も頑張れ自分。
適度に周囲に気を張りながら眠りに落ちる。夢の中で俺たちの影が金色の光をまとって夜空を旅をしていた。影の癖に生意気な。



***



自由という言葉を知らない

通りすがりのZ燃え様リクエスト、セフィザの二人で銀河鉄道(≒郊外で天体観測)でした!
月の満ち欠けは地球の影ではなくただ太陽のあたる角度の問題ですが、そこはもうファンタジーということで一つ…。
常に月食状態なんです。そういうことにしてください。もう意味が分からないですね
書きやすいようにとの御配慮、本当にありがとうございました!御蔭さまで楽しく書くことが出来ました!この出来ですが!この出来ですが!
こんな駄文ですがよろしければ受け取ってください。本当にリクエストありがとうございました!

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