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ジョルミス

「…………」
「…………………」

その視線に耐えきれずにミスタは振り向いた。自らの背中に注がれる熱視線。
職業柄視線には敏感である。本来それは敵意や殺意を含むものの筈だったが。
今回のにはそれが無い。そんな注意書きをわざわざ付けずとも、そんな視線を送って来る相手はこの場に一人しかいないのだが。
どんなに鈍感な木偶の棒でも気づくのでは、というレベルの直線的な視線。

「ジョルノ」
「はい、なんでしょうミスタ」
「いいかげんにやめてくれねぇか」
「何を?」
「俺のこと見続けンの」

仕事がしにくくてしかたねぇと、普段からたいしたスピードを出している訳でも無い書類仕事を放り投げて彼はぼやいた。

「何か言いたいことがあるなら言えや」
「判りませんか?」
「見られるだけで判るようなエスパーじゃねぇんだよ俺は」

それでもジョルノは何も言おうとはしなかった。ただただミスタを見つめ続けるだけ。
その根競べに先に折れたのは、言うまでも無くミスタだった。

「あー、はいはい、降参降参」
「どうしたんです?」
「さっぱり判んねぇ。昼飯奢ってやるから勘弁してくれよ」
「なんだ、通じてるじゃないですか」

いつのまに終わらせていたのか、ミスタには判らない。
彼に熱視線を注ぎ続けていた筈のジョルノの仕事は既にかたづけられており、そうして彼は軽やかに立ちあがった。

「お昼をご一緒したいと思っていたんですよ」

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