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ジョージ×リサリサ(きうたんが貰ってくれましたありがとう!)

彼女は全然好きでは無かった。語呂合わせとか、星座占いだとか、血液型の相性だとか、なんの意味も無いイベント事が全然好きでは無かった。好きではないと言うよりも、嫌悪に近かった。それはひたすらに無駄な労力を伴って、誰かの掌で踊らされているだけだった。それが非常に腹立たしかった。生産性の無い無意味な行為など一つも好きになれなかった。

「どうぞ」

目の前の男がにこやかな笑顔で差し出してくるお菓子を、リサリサは胡乱気な目で見つめながら、それでも手に取った。チョコレートのついた、棒状のクッキー。そうとしか形容のしようが無い、単純な作りのお菓子だった。高級感などは無い、庶民向けの安い小麦と合成的なチョコレートの香りが幽かに香った。

「この前ジャパンに飛んだ時にね。大人気だっていうから」
「人気だからって、買うの?」
「好かれるものには、ちゃんとそれなりの理由があるよ」

とげとげしい彼女の台詞にも、ジョージの笑顔は崩れなかった。それに気押されたと言うわけでは無いけれど、リサリサは仏頂面のままそれを口に運ぶ。ポキン、という軽やかな音とともにあっという間に口へ消えたお菓子。予想通りの安い味。

「どうしてこんなもの私に買ってきたの?」
「そうだね。これを食べている人たちが、皆幸せそうだったから」
「食べてる人が幸せそうだったら、皆幸せになれるっていうの?」
「そんなことはないさ。でも、その幸せをおすそ分けしてもらえそうだろう?」

随分と、非科学的だこと。まぎれも無い皮肉は、「幸福に科学が必要かい?」という彼の一言で封殺された。黙りこむリサリサを、ただジョージは穏やかな顔で見つめている。

「貴方、どうして私が好きなの?」
「好かれるものには、ちゃんとそれなりの理由があるよ」

それが判らないから聞いているんじゃない、という言葉をリサリサは飲み込んだ。それを口にしたら負けのような気がした。何に勝とうとしているのかも判らなかったけれど。その言葉を口に出すのは非常に悔しかった。

「もう一本いるかい?」

彼のその笑顔がひたすらに憎らしくて憎らしくて、袋の中に残っていたその安っちいお菓子を全て掴んで彼の口に押し込んだ。目を白黒させている彼を置いて歩き出す。慌てて駆け寄って来る足音に、自然と浮かんでしまった笑みには気がつかないふりをした。

色々なことが終わって、沢山のしがらみと後悔から解放されてからこの行事の由来と真相を知って、彼女は思わず失笑を漏らしてしまった。なんて下らないイベントだろう。なんて密やかに甘かった、幸せな彼女の記憶。

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