ねーねー真ちゃん! なんでそっぽ向いてんの? え?うるさい? でも俺真ちゃんとお話したいな!

「毎日毎日顔を付き合わせているのに何を話すと言うのだよ」
「えー、昨日の晩御飯とか」
「オムライスだ。満足したか」
「オムライス?!」
「なんだ」
「似合わねえ!!」

そう言って大爆笑したら本気で怒ったらしい真ちゃんに思いっきり頭をどつかれた。いってぇ! だけどぷりぷりした姿も可愛かったので俺はなんか嬉しくなって笑う。そしたらもっと怒ってしまった。ありゃ。

「ケチャップで何か書いた?」
「……うちはデミグラスソースだ」

デミグラスソース。頭の中で想像する。とろとろのオムライスの上にゆったりとかかったソース。ボルチーニ茸の匂い。スプーンで掬って真ちゃんの口元に運ばれて、小さく開いて飲み込まれるそれ。

「なんかエロいね?」
「どうしてそうなる」

呆れたようなため息。うーん、わかんないのかな真ちゃんには。俺が変なのかな。いや、そんなことも無いと思う。例えば俺が卵になったら真ちゃんに食べられたい。いや、これだとなんか怖いな。やめとこ。俺は真ちゃんに食べられたいんじゃなくて真ちゃんと一緒に食べたいのだ。

「今度オムライス食べに行こう」
「話題が飛びすぎだ」
「ね、そうしよう」

まあ、お前の奢りなら、行ってやらなくもないのだよ。
そんな言葉が返ってくるのを期待して俺は真ちゃんを見る。そしたら思いのほかまっすぐな視線にぶつかって、柄にもなく慌ててしまった。

「そうだな」
「へ?」
「だが、俺はお前のオムライスを食べてみたい」

その言葉を一瞬エロい意味かと思ってしまった俺をお許し下さい。アーメン。

「え、真ちゃん、何を」
「お前の家は」
「はい」
「ケチャップで何か書くのだろう?」

かわいい!!!
真ちゃんの瞳がちょっとだけきらきらしてるのが判る。なあに真ちゃん、そんなにオムライスに何か書きたかったの。一回も書いたことないの。憧れてたの? おいしいデミグラスソースじゃなくて、安っぽいケチャップの落書きに?

「真ちゃんかわいいね!!」

思ったまま言ったらまた頭を叩かれた。でも俺はやっぱり真ちゃんがかわいくて嬉しいので笑ってしまって、真ちゃんはまたぷりぷり怒り出すかと思ったらそんなことはなくて、俺に釣られて笑い始めたので俺はもっと嬉しくなって笑ってしまう。
ねーねー真ちゃん、今度俺の家にオムライス食べにおいでよ。そしたら俺真ちゃんのに『あいらぶゆー』って書いて渡すから!そしたら真ちゃんも真っ赤な『あいらぶゆー』頂戴!

ねーねー真ちゃん、お話しよう!





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